黒歴史の上書き保存
不定期更新+加筆修正あり
「厭」
目次後の白きに潜む身なものでかく余白なき世の生きづらし
パチパチと決別の音を繰り返す 淋しくはない淋しくはない(題詠『爪』)
半分も遮る雲が占めるのにそれは晴れだと言われる痛苦
フラッシュを断続的に向けられて罪を数えるトンネルの中
旅します。食べにいきます。家にいます。命令形の社会の中で
じゃんけんに負けて始まる二つ目の電柱までの階級社会
小学生男児の頃に見えていた秒の目盛りは粗くなりゆく
かなしみに気づいたように大人ほど燻んだ色の傘をひらいて
「閑」
果物を牛を想わず飲みつくすいちごみるくという味のまま
悲しみは減らないですね ドライバーよ畦に転がるコーヒーたちよ
独り身の学習机は母からのバレンタインのチロルが咲けり
くすくすと稚児は木魚に笑ひをり悟りつつある祖父の帰らぬ
夢を見る夢に破れる美しさありて椿はかがやくばかり
「妄」
でたらめの世界で僕はチャーハンを10秒多く温めている
なんとなく負の能力を持ちたくて蟹アレルギーだった中1
〈ビーフorチキン〉の効果:坊さんとベジタリアンと諸々が死ぬ
溶けきっていたはずだった2つ目のガムシロップが沈みゆく昼
やわらかいあかにあなたがよぎるから秋のドウダンツツジは見ない
日常をぱらん、ぽろんと破壊する テレビ上部の白いテロップ
ほんとうにおそろしいのはクーラーでらくにすごせてしまうことでは
「端」
不健康な人間どもが起きている時間に2合米を研ぐ母
新聞の音も朝陽も置き去って母はだし巻き玉子を畳む
電柱がこぞって空を切り分ける夕方という小さな事件
下校時をはじける声が泡立てば乱反射する川のかがやき
好きなひとのはねやはらいの角度まで飲みこんでゆき私の癖字
雑感
半分くらい食関連のワードが入ってて笑いました。
追記
前向きな歌が増えた気がする